研究助成

2022年度 武田報彰医学研究助成

てんかん関連リガンド受容体複合体 LGI1-ADAM22 を軸とする分子シグナルの構造生命科学

研究題目 てんかん関連リガンド受容体複合体 LGI1-ADAM22 を軸とする分子シグナルの構造生命科学
年度/助成プログラム 2022年度 武田報彰医学研究助成
所属 京都大学 大学院理学研究科化学専攻
氏名 深井 周也
キーワード てんかん / シナプス / LGI1 / クライオ電子顕微鏡 / X線結晶構造解析
研究結果概要 家族性てんかんの原因遺伝子産物LGI1は、神経細胞で発現する分泌タンパク質であり、その欠損により致命的なてんかん症状を引き起こす。また、LGI1に対する自己抗体の発現は、てんかん発作や意識障害をきたす辺縁系脳炎を引き起こす。シナプスにおいて、LGI1は、その受容体であるADAM22を起点とする分子シグナル経路を介してAMPA受容体の動態を制御する。LGI1とADAM22は軸索起始部や傍パラノードにも発現しており、軸索に沿った活動電位の伝導との関連も示唆されている。本研究では、抗LGI1抗体によるLGI1の機能阻害機構やLGI1–ADAM22の会合状態の制御機構等を立体構造に基づいて理解することを目的とした。これまでに、抗LGI1抗体の一つについて、scFv断片とLGI1との複合体の結晶構造を決定し、ADAM22との結合を競争的に阻害する分子機構を明らかにした。また、3:3の化学量論比で会合したLGI1–ADAM22の立体構造をcryo-EMにより決定し、高速AFMによる解析と組み合わせて、その動的な性質を明らかにした(Yamaguchi et al., eLife, 2025)。
公表論文 "Structural insights into heterohexameric assembly of
epilepsy-related ligand–receptor complex LGI1–ADAM22"、eLife、14:RP105918 (2025) https://doi.org/10.7554/eLife.105918.1