研究助成

2022年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)

非腫瘍性頭蓋内脳血管疾患における体細胞変異の同定と治療薬への応用

研究題目 非腫瘍性頭蓋内脳血管疾患における体細胞変異の同定と治療薬への応用
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)
所属 理化学研究所 生命医科学研究センターがんゲノム研究チーム
氏名 笹川 翔太
キーワード 脳血管疾患 / 脳動脈瘤(IA) / 脳動静脈奇形(AVM) / 体細胞変異 / 空間トランスクリプトーム解析
研究結果概要 日本の1年間の死因別死亡総数のうち、脳血管疾患は全死因の上位3番目に位置する。脳血管疾患には、脳動脈瘤(IA)や脳動静脈奇形(AVM)が含まれており、病変性出血性脳卒中の主要な原因であり、有効な治療法が外科的治療しかないのが現状である。これらの病変の分子基盤を理解することは、新規の標的治療法の開発にとって重要なステップである。脳動脈瘤患者65名に対し、全エクソームシーケンス(WES)を行い、PDGFRBを含む16の遺伝子を同定し、これらの変異は調査した全IA症例において高頻度であった。特に、6つの遺伝子の変異は、その多くがNF-kBシグナル伝達に関連しており、膿状型IAと嚢状型IAの両方に高い頻度で認められた。我々は、変異PDGFRBがERKおよびNF-kBシグナルを構成的に活性化し、細胞運動を亢進させ、in vitroで炎症関連遺伝子の発現を誘導することを見出した(公表論文掲載情報1)。一方、AVMに対しても50症例以上のWESを行い、新たな新規体細胞変異の同定を行った。さらに、AVM4症例に対して空間トランスクリプトーム解析も実施済みである。これらのデータを基に解析中である。
公表論文 Increased PDGFRB and NF-κB signaling caused by highly prevalent somatic mutations in intracranial aneurysms” Science Translational Medicine, 14 Jun 2023