研究助成

2022年度 医学系研究助成(感染領域)

A群レンサ球菌の金属輸送体MntEの金属選択における柔軟性獲得機構の解明と新たな感染制御法への応用

研究題目 A群レンサ球菌の金属輸送体MntEの金属選択における柔軟性獲得機構の解明と新たな感染制御法への応用
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究助成(感染領域)
所属 京都大学 大学院医学研究科 微生物感染症学分野
氏名 相川 知宏
キーワード A群レンサ球菌 / CDF / MntE / CzcD
研究結果概要 陽イオン拡散促進因子(CDFs)は、幅広い特異性を持つ二価金属輸送体のファミリーであり、病原性細菌の菌体内金属の恒常性と毒性に関与する。A群レンサ球菌(GAS)は、マンガンと亜鉛をそれぞれ選択的に輸送する2つのCDF排出輸送体、MntEとCzcDを発現する。我々は、好中球およびTHP-1細胞内でMntEとCzcD欠損株の生存率が著しく低下することを発見した。また、両欠損株に感染したマウスの生存率は有意に上昇した。先行研究と一致して、MntEによる菌体内のマンガン濃度を恒常性が、PerR依存的な酸化ストレス応答を介してGASの増殖に寄与することを示した。本研究においては、CzcD欠損株の培養液中では亜鉛が、MntE欠損株の培養液中ではマンガンが、GASの重要な病原因子であるシステインプロテアーゼSpeBの成熟および活性を阻害することを明らかにした。また、SpeB欠損株の培養細胞やマウスに対する病原性が著しく低下していたことから、MntEおよびCzcDを介した菌体内のマンガンおよび亜鉛濃度の恒常性は、本菌に金属耐性を付与するだけでなく、病原性にも本質的な役割を果たしている可能性がある。
公表論文 Group A Streptococcus cation diffusion facilitator proteins contribute to immune evasion by regulating intracellular metal concentrations. Biochemical and Biophysical Research Communications. Volume 676, 8 October 2023, Pages 141-148.