研究助成

2022年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)

大脳発達における知的障害責任分子Rac1の生理機能と分子病態機構の解明

研究題目 大脳発達における知的障害責任分子Rac1の生理機能と分子病態機構の解明
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)
所属 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 分子病態研究部
氏名 西川 将司
キーワード 神経発生 / 発達障害 / 細胞骨格 / Gタンパク質 / RAC1
研究結果概要 本研究では、発達障害の責任遺伝子であるRAC1の新規ミスセンス変異(Tyr40HisおよびGlu31Gly)について、分子病態メカニズムの解明を行った。RAC1-Tyr40His変異は、VACTERL症候群を呈した新生児において同定され、RAC1下流エフェクターのPAK1との結合能が低下し、RAC1-PAK1シグナルの活性化を阻害することを示した。さらに、RAC1-Glu31Gly変異は、小頭症と知的障害を伴う学童期症例から同定され、細胞内でのPAK1結合不全とともに、神経突起の形成障害を引き起こすことを、海馬神経培養およびin utero電気穿孔マウスモデルにより明らかにした。これらの変異は、いずれもPAK1経路の抑制を介したRAC1機能阻害型(ドミナントネガティブ)として働くことが示唆された。これにより、RAC1遺伝子異常による多様な表現型の背景にある分子機序の一端が解明され、Neuro-RACopathyの病態理解と治療標的探索に貢献する知見が得られた。
公表論文 Pathophysiological significance of the p.E31G variant in RAC1 responsible for a neurodevelopmental disorder with microcephaly, Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Basis of Disease 1871(1) 167520-167520 2025年1月
A missense variant at the RAC1-PAK1 binding site of RAC1 inactivates downstream signaling in VACTERL association, Scientific Reports 13(1) 2023年6月16日