研究助成

2022年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))

がん治療抵抗性をもたらす胚休眠の誘導メカニズムの解析

研究題目 がん治療抵抗性をもたらす胚休眠の誘導メカニズムの解析
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))
所属 藤田医科大学 研究支援推進本部 がん医療研究センター 遺伝子制御研究部門
氏名 杉原 英志
キーワード 治療抵抗性 / 休眠状態 / 卵巣がん / MYC
研究結果概要 本研究ではがん細胞が治療薬に対してどのような条件で胚休眠を誘導し、薬剤抵抗性の生残細胞(persister細胞)を産生し治療を回避するのか、そのメカニズムを解明することを目的として研究を実施した。標準治療で7割と非常に再発が多い卵巣がんを対象に、休眠状態作動の原因として報告されているがん遺伝子MYCが増幅した細胞株を用いた。まず、カルボプラチンもしくはパクリタキセル処理後のpersister細胞を作製し、再増殖した細胞の全エクソンシーケンスによる変異解析を行った。その結果、persister細胞には新たな変異は発生しないことが分かり、遺伝子発現の動的変動が胚休眠に重要であることが分かった。次に治療後のMYC発現量とRNAシーケンスによる遺伝子発現プロファイルを実施した。その結果、MYCのmRNA量は治療後に維持されたが、タンパク質量は減少しており、タンパクレベルでの制御により休眠状態へ移行することが示唆された。変動遺伝子群のエンリッチメント解析では、翻訳関連遺伝子群の低下が認められたため、MYC低下はタンパク分解よりむしろ翻訳の低下が休眠誘導に重要な役割を果たす可能性が示された。
公表論文