研究助成

2022年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))

乳がん細胞におけるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤による転写抑制機構の解明

研究題目 乳がん細胞におけるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤による転写抑制機構の解明
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))
所属 がん研究会 がん研究所がん生物部
氏名 立和名 博昭
キーワード 乳がん / エピジェネティクス
研究結果概要 我々はエストロゲン受容体(ER)陽性乳がんにおいて、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の処理により、これらの特異的な遺伝子群の転写が抑制されることを見出した。HDAC阻害剤添加後に転写抑制が起きた遺伝子では、RNA Pol IIの伸長は維持されていたが、プロモーターへのリクルートメントが阻害されていることが明らかとなった。さらに、RNA Pol IIの結合がHDAC阻害剤依存的に減少している領域は、遺伝子間領域にも存在していた。これらの領域は、エンハンサーに特異的なヒストン修飾マーカーと重なっていたことから、HDAC阻害剤がエンハンサーに作用していることが示唆された。加えて、これらのエンハンサー候補領域では、RNA Pol IIに加えて、Mediator複合体の結合もHDAC阻害剤依存的に減少した。そこで、ゲノム間相互作用を調べた結果、これらのエンハンサー候補領域がプロモーターと物理的に相互作用していることが明らかとなった。以上の結果から、ER陽性乳がんに特異的に発現する遺伝子群は、HDAC活性に依存するエンハンサーを介して転写制御されていることが示された。
公表論文