研究助成

2022年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)

脳血管周皮細胞の機能障害によるアルツハイマー病の増悪機序の解明

研究題目 脳血管周皮細胞の機能障害によるアルツハイマー病の増悪機序の解明
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)
所属 神戸医療産業都市推進機構 先端医療研究センター 神経変性疾患研究部
氏名 笹原 智也
キーワード 周皮細胞 / ペリサイト / アルツハイマー病 / δセクレターゼ / 病態伝播
研究結果概要 本研究では、申請者らが見出していた『アミロイドβ凝集体アミロスフェロイド (ASPD)の血管周皮細胞への作用による神経細胞δセクレターゼ活性化』の分子機序とアルツハイマー病悪化への関与を検証した。
最初にASPDの結合ターゲットを探索し、周皮細胞膜のα3型ナトリウムポンプ(NKAα3)であることを見出した。NKAα3は神経特異的に、また極少量であるが血管内皮細胞のカベオラにそれぞれ存在するが、驚くことに周皮細胞は神経細胞と同程度の高いNKAα3発現量であった。また、神経細胞で活性化したδセクレターゼは凝集性の高いアミロイドβ42や断片化タウの神経細胞内蓄積量を増加することを見出した。
これら結果は、血中に分泌されたASPDが脳血管周皮細胞NKAα3に作用することでその近傍の神経にアミロイドβやタウの病態を伝播することを示し、未だ全容が解明されていないアルツハイマー病の病態伝播機序の解明に寄与すると期待される。ASPDのターゲットは周皮細胞や神経細胞、血管内皮細胞で共通しており、ASPD-NKAα3の結合阻害がアルツハイマー病の新規治療ターゲットになり得ると期待される。
公表論文 How Alzheimer’s Aβ propagates and triggers tau pathology in intact neurons、bioRxiv、doi:10.1101/2024.08.28.608712