研究助成

2022年度 医学系研究助成(基礎)

配偶子の相互補完性を保証するゲノム機能の解明

研究題目 配偶子の相互補完性を保証するゲノム機能の解明
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究助成(基礎)
所属 九州大学 医学研究院 ヒトゲノム幹細胞医学
氏名 白根 健次郎
キーワード 卵母細胞 / ヒストンメチル化 / DNAメチル化 / 転写制御因子
研究結果概要 配偶子は雌雄で異なるゲノム機能をもち、接合によって相互補完されることで発生能を獲得する。その代表例が、雌雄で特異的に確立されるインプリント遺伝子のDNAメチル化である。インプリント遺伝子に限らず、配偶子間ではゲノム全体のDNAメチル化分布にも顕著な差があり、卵子ではH3K36me3を触媒するSETD2、精子ではH3K36me2を触媒するNSD1がDNAメチル化を先導する。また、卵母細胞では精子のようなH3K36me2パターンを示さないことから、NSD1の機能が何らかの機構により阻害されている可能性がある。そこで本研究では、卵子特異的に発現するNSD1アイソフォームNSD1oがNSD1の機能を阻害し、精子型DNAメチル化の獲得を防いでいるかを検証した。しかし、Nsd1o欠損卵母細胞におけるDNAメチル化パターンに顕著な変化は見られず、NSD1oは核内ではなく細胞質に局在することが判明した。この結果は、NSD1とは異なる分子機能をNSD1oが担っている可能性を示唆しており、今後はその細胞質内での機能解明を通じて、雌雄配偶子のゲノム機能差形成の原理解明を目指す。
公表論文 Epigenetic Mechanisms Governing Female and Male Germline Development in Mammals, Sexual Development, 2022;16:365-387.