研究助成

2022年度 医学系研究継続助成(精神・神経・脳領域)

超大規模電気生理学記録法を用いた記憶情報表現のマルチスケール解析

研究題目 超大規模電気生理学記録法を用いた記憶情報表現のマルチスケール解析
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究継続助成(精神・神経・脳領域)
所属 大阪市立大学 大学院医学研究科 神経生理学
氏名 宮脇 寛行
キーワード 脳領域間同期活動 / ノンレム睡眠 / 記憶固定化
研究結果概要 脳はさまざまな領域で並列的に情報を処理する一方で、これらの情報を統合し様々な高次機能を実現している。また、ヒトを含む動物はその経験に基づき、同一条件下でも異なる行動を選択するようになる。これは、それぞれの脳領域内の情報処理や脳領域横断的な情報統合が経験依存的に変化することを示唆しているが、その詳細は明らかではない。
本研究ではこの点を明らかにするため腹側海馬・扁桃体・大脳皮質前頭前野から多数の神経細胞の活動を同時に記録し、そのパターンを解析した。その結果、これらの脳領域の主要細胞は異なる睡眠状態選好性を示す集団から構成されており、睡眠中にはこの選好性が似た細胞で領域横断的な同期活動が強く見られることが明らかとなった。さらに、各領域で特定情報を符号している細胞集団のうち、経験後の睡眠中に脳領域横断的な同期活動を示す神経細胞集団は、その他の神経細胞集団よりもその後の覚醒時まで保存されやすい傾向があることが明らかとなった。これらの結果はいずれも、それぞれの脳領域内の局所ネットワークと、脳領域横断的な広域ネットワークの間に、解剖学的スケールを超えた相互作用が存在することを示唆している。
公表論文 Firing Activities of REM- and NREM-Preferring Neurons Are Differently Modulated by Fast Network Oscillations and Behavior in the Hippocampus, Prelimbic Cortex, and Amygdala. eNeuro 12. 10.1523/ENEURO.0575-24.2025.