研究助成

2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)

空間認識を支える脳領域間伝達の実体解明

研究題目 空間認識を支える脳領域間伝達の実体解明
年度/助成プログラム 2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)
所属 東京大学 大学院総合文化研究科
氏名 北西 卓磨
キーワード 海馬 / 海馬台 / 空間情報 / 神経多様体
研究結果概要 空間認識は動物の生存に重要な脳機能である。空間認識の脳基盤を構成するのは、海馬体における空間表象だと考えられている。これまで、海馬CA1野の空間表象について様々な研究が進められてきたが、その1シナプス下流に位置する海馬台の情報表現は良く分かっていなかった。とりわけ、個々の神経細胞による情報表現を超えた、神経細胞の集団による情報表現の様態は不明だった。本研究は、海馬CA1野と海馬台の神経細胞集団による情報表現を、低次元神経多様体という概念に着目して特徴づけた。両領域の集団活動は動物のいる物理空間に類似した位相幾何学構造を持ち、多彩な空間情報 (動物の位置・スピード・道順) を表現することを見出した。さらに、海馬CA1野と比べて、海馬台の集団活動は、空間探索中はより高密度に空間情報を符号化すること、睡眠中は動物にとり重要な情報をより高頻度に再編成することを見出した。本研究は、海馬と海馬台の集団活動はともに低次元神経多様体を構成して多様な空間情報を表現すること、また、海馬台は海馬とは異なる様式で神経多様体に情報を符号化することを初めて明らかにしたものである。
公表論文 Nakai S, Kitanishi T*, and Mizuseki K* (*corresponding authors). Distinct manifold encoding of navigational information in the subiculum and hippocampus. Science Advances. (2024) 10:eadi4471.