研究助成

2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)

新規力学応答センサーの同定を目指した血流ベクトルを認識する心臓弁形成機構の解明

研究題目 新規力学応答センサーの同定を目指した血流ベクトルを認識する心臓弁形成機構の解明
年度/助成プログラム 2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)
所属 国立循環器病研究センター研究所 細胞生物学部
氏名 福井 一
キーワード 心臓弁形成 / ゼブラフィッシュ / 力学応答 / Ca2+流入
研究結果概要 拍動し続ける心臓で生じる力学情報は、心臓形成・機能形態維持に必須の役割をもつ。ただし、様々な外力が継続して生じる心臓では、細胞がどのように適切に力学刺激に応答するのか不明である。先行研究から、血流方向の変化が力学応答シグナル活性を調節することを見出した。そこで本課題では、「血流ベクトルの違いを生体が認識する機構」を明らかにすることを目指してきた。主な結果として、磁力と磁性流体により物理的な力を心臓管腔内で操作する手法を新たに開発し、管腔面に対して並行(接線方向)に作用するせん断応力が生体シグナル(Ca2+流入)を誘導することを見出した。他方で、垂直に力を作用させた際、細胞膜張力が増加するにも関わらずCa2+流入が認められなかった。血液は粘性をもち、管腔表面ではせん断応力が摩擦抵抗を介した熱エネルギーへ変換されるため、発展的仮説「粘性をもつ血液流体の摩擦抵抗から生じる熱が力学作用本体となり、心臓管腔内の生体力学シグナルを制御する」を着想した。現在、ゼブラフィッシュ胚体内に温熱刺激を誘導できる系と熱変化を定量観察できるセンサー発現系統を樹立しており、課題研究が発展している。
公表論文 Dynamic stimuli shape cardiac development: manipulating mechanical forces in the embryonic zebrafish heart. Journal of Visualized Experiments, 215 (2025). Vagena-Pantoula C, Fukui H, Vermot J. doi: 10.3791/67604.