研究助成

2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)

疾患進展を制御するアンジオクラインシステムの解明

研究題目 疾患進展を制御するアンジオクラインシステムの解明
年度/助成プログラム 2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)
所属 福井大学 学術研究院医学系部門 血管統御学分野
氏名 木戸屋 浩康
キーワード アンジオクラインファクター / がん幹細胞 / 腫瘍血管 / Sfrp1 / Wntシグナル
研究結果概要 本研究では、従来の「輸送路」としての血管機能から発展し、血管がアンジオクラインファクターと呼ばれる分子群を産生することで「組織の司令塔」として機能する新たな側面に注目して研究を進めた。特に、がん治療における治療抵抗性の原因となるがん幹細胞に着目し、その維持機構におけるアンジオクラインシステムの役割を解析した。がん幹細胞は増殖が緩慢で薬剤排出能が高く、従来の抗がん剤では除去困難である。本研究では、腫瘍血管から分泌されるWntシグナル制御因子Sfrp1を同定し、遺伝子欠損マウスを用いた機能解析を実施した。その結果、Sfrp1はがん幹細胞の増殖を適度に抑制することで長期維持に寄与し、Sfrp1遺伝子を欠損するとがん幹細胞が過剰増殖して消費され、結果的に腫瘍増殖が抑制されることを発見した。これにより、Sfrp1阻害による新たながん治療法の可能性が示された。本研究の成果は、腫瘍血管の新たな機能を明らかにし、アンジオクラインファクターを標的とした難治性がん治療法開発の基盤を提供するものである。今後は、多様な疾患におけるアンジオクラインシステムの解明を進めていきたい。
公表論文 Tumor endothelial cell-derived Sfrp1 supports the maintenance of cancer stem cells via Wnt signaling. In Vitro Cell Dev Biol Anim. Hayashi Y, Hashimoto M, Takaoka K, Takemoto T, Takakura N, Kidoya H. 2024 Dec;60(10):1123-1131. doi: 10.1007/s11626-024-00899-y.