研究助成

2022年度 ビジョナリーリサーチ継続助成(ホップ)

ポジティブな感情を欠損させたマウスの睡眠・覚醒と行動変化の関係性の探索

研究題目 ポジティブな感情を欠損させたマウスの睡眠・覚醒と行動変化の関係性の探索
年度/助成プログラム 2022年度 ビジョナリーリサーチ継続助成(ホップ)
所属 筑波大学 医学医療系
氏名 長谷川 恵美
キーワード マウス / レム睡眠 / 扁桃体
研究結果概要 本研究課題は、扁桃体基底外側核(BLA)におけるREM睡眠開始の神経回路を明らかにすることを目的とした。まず、ノンレム睡眠中にBLAへ投射する腹側被蓋野ドーパミン(VTA-DA)神経を一過的に活性化すると、REM睡眠が誘導され、BLA内でcFos遺伝子の発現が有意に増加した。そこで、TRAP2-iCreマウスを用いてDA応答性の細胞集団を同定し、薬理遺伝学的に刺激した結果、REM睡眠量が増加した。これらの細胞は、脳幹のREM睡眠制御領域に神経終末を送っており、BLAがREM睡眠開始に重要な役割を果たすことが示された。さらに、BLAにおけるDAとセロトニン(5HT)の相互作用を調べるため、背側縫線核5HT神経を光遺伝学的に一過的に抑制したところ、BLA内のDA濃度が上昇し、それに伴ってREM睡眠が誘発された。この結果より、ノンレム睡眠中の5HTシグナルの減少がDA放出を引き起こし、REM睡眠開始の引き金となる可能性が示唆された。したがって、本研究課題は、情動と睡眠が関与する神経基盤の理解を深め、精神疾患に伴う睡眠障害の新たな治療戦略への応用につながる知見の提供が期待される。
公表論文 E. Hasegawa, Y. Li, T. Sakurai, Regulation of REM sleep in mice: The role of dopamine and serotonin function in the basolateral amygdala, Neurosci Res, S0168-0102(23)00168-2 (2023)