研究助成

2023年度 ライフサイエンス研究助成

脳の拡大化を支配する時間スケーリング機構を解く

研究題目 脳の拡大化を支配する時間スケーリング機構を解く
年度/助成プログラム 2023年度 ライフサイエンス研究助成
所属 理化学研究所 生命機能科学研究センター 非対称細胞分裂研究チーム
氏名 呉 泉
キーワード 発生生物学 / 神経科学 / エピジェネティクス / 代謝生物学
研究結果概要 本研究では、哺乳類の大脳皮質神経発生がマウスでは約1週間、フェレットでは約1か月、ヒトでは数か月に及ぶ一方で、深層ニューロン、上層ニューロン、グリア細胞へと進む時間的順序が保存される理由を明らかにすることを目的とした。マウス・フェレット・ヒト大脳皮質オルガノイドを用い、単一細胞トランスクリプトーム、数理モデル、H3K27me3 ChIP-seq、Ezh2条件付きノックアウト実験、α-ケトグルタル酸(α-KG)による代謝操作を統合した。その結果、神経幹細胞の時間的遺伝子発現プログラムは種を超えて保存されるが、その進行速度はH3K27me3脱メチル化速度により制御されることを示した。さらに、Ezh2を神経幹細胞からノックアウトはマウスおよびフェレットで神経発生・グリア発生を前倒しし、α-KGはH3K27me3脱メチル化を介して後期遺伝子発現とヒト皮質オルガノイドの上層ニューロン・グリア産生を促進した。以上より、代謝−エピジェネティック軸が哺乳類脳発生の時間スケーリングと脳サイズ制御に関与することを明らかにした。
公表論文 Quan Wu*, Charlotte Manser, Taeko Suetsugu, Ryo Yoshida, Hideya Sakaguchi, Yoichi Nabeshima, Hiroshi Kiyonari, Ruben Perez-Carrasco, Fumio Matsuzaki. Epigenetic–metabolic axis in the temporal scaling of mammalian cortical neurogenesis across species. bioRxiv, 2025. doi: 10.1101/2025.09.23.677958