研究助成

2023年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))

がん幹細胞におけるBMP(骨形成因子)シグナルの分子機構解明

研究題目 がん幹細胞におけるBMP(骨形成因子)シグナルの分子機構解明
年度/助成プログラム 2023年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))
所属 帝京大学 先端総合研究機構健康科学研究部門
氏名 森川 真大
キーワード BMP(骨形成因子) / SMAD / ヒストン脱メチル化酵素 / H3K4me1/2 / マウス胚性幹細胞
研究結果概要 本研究はがん幹細胞の未分化性の制御機構の解明を目的に、マウス胚性幹細胞(mESC)での解析を先に実施し、BMP(骨形成因子)–SMAD1/5依存の転写抑制経路を同定した。単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq)解析では、未分化条件下で培養したSmad1/5欠損mESCと野生型の細胞状態に大きな差は認められず、同一条件下で直接比較が可能であることを確認した。クロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)解析と生化学的解析から、SMAD1/5がヒストン脱メチル化酵素KDM1A/LSD1をエンハンサーに動員し、H3K4me1/2を除去して標的遺伝子の転写を抑制する機構を明らかにした。従来、SMAD1/5を含むタンパク質複合体がヒストン修飾変化を介して転写活性化を誘導することは知られていたが、転写抑制に関与する修飾変化の体系的報告は限定的であった。今後は、がん幹細胞における本機構の保存性と腫瘍性・分化耐性への寄与を検証し、BMP–SMAD1/5–KDM1A軸の治療応用可能性およびKDM1A(LSD1)阻害薬との併用による新規治療戦略の開発を目指す。
公表論文 タイトル:SMAD1/5-Mediated Recruitment of the Histone Demethylase KDM1A Controls Cell Fate Programs in Embryonic Stem Cells
誌名:Journal of Biological Chemistry
著者:Masato Morikawa, Daizo Koinuma, Hiroaki Sakai, Yusuke Kanda, Keiko Yuki, Koji Okamoto, Kohei Miyazono
DOI:10.1016/j.jbc.2025.110591