研究助成

2023年度 医学系研究助成(基礎)

アルツハイマー病発症に関わる女性ホルモンエストロゲン受容体(ER)および関連受容体(ERR)による遺伝子転写・RNA代謝制御機構の包括的解明

研究題目 アルツハイマー病発症に関わる女性ホルモンエストロゲン受容体(ER)および関連受容体(ERR)による遺伝子転写・RNA代謝制御機構の包括的解明
年度/助成プログラム 2023年度 医学系研究助成(基礎)
所属 東京都健康長寿医療センター システム加齢医学
氏名 佐藤 薫
キーワード アルツハイマー型認知症 / 女性ホルモン / エストロゲン / エストロゲン関連受容体 / Wntシグナル伝達経路
研究結果概要 アルツハイマー型認知症(AD)は認知症のおよそ7割を占め、依然難治性である。また、ADは女性での発症率が高く、原因として閉経および加齢による女性ホルモンであるエストロゲン量低下の関与が示唆されている。エストロゲンは、エストロゲン受容体(ER)へ結合することで作用する。また、ERには相同性の高いエストロゲン関連受容体(ERR)があり、遺伝子転写制御を行うが、それらのヒト神経細胞における標的遺伝子やADにおける役割については不明な点が多い。本研究では、ヒト神経細胞で高発現がみられるERRαとERRγの結合DNA部位を包括的に同定した。それら結合部位には、ADを含む神経変性疾患の関連遺伝子のプロモーター領域が多数検出された。さらに、ADと関連する有力な標的遺伝子候補としてWntシグナル経路の阻害分子であるDICKKOPF-1(DKK1)を同定した。ERRαおよびERRγはDKK1の転写抑制により、Wntシグナル経路の活性化とそれに伴うタウのリン酸化の抑制に寄与する。これにより、ERRαおよびERRγがDKK1の転写制御を介して、AD発症を抑制することが示唆された。
公表論文 Sato K, Takayama K, Saito Y, Inoue S. ERRα and ERRγ coordinate expression of genes associated with Alzheimer's disease, inhibiting DKK1 to suppress tau phosphorylation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2024) 121:e2406854121.