研究助成

2022年度 武田報彰医学研究助成

包括的RNAプロファイリングによるU1 snRNA変異型髄芽腫の病態解明と治療標的の同定

研究題目 包括的RNAプロファイリングによるU1 snRNA変異型髄芽腫の病態解明と治療標的の同定
年度/助成プログラム 2022年度 武田報彰医学研究助成
所属 国立がん研究センター研究所 脳腫瘍連携研究分野
氏名 鈴木 啓道
キーワード 髄芽腫 / スプライシング / RNA修飾
研究結果概要 本研究では、髄芽腫におけるU1 small nuclear RNA(snRNA)変異の病態形成メカニズムを解明するため、シークエンス解析を中心とした多角的な解析を行った。特に、一分子ロングリードシークエンスおよびdirect RNA sequencingを活用することで、従来の手法では検出が困難であったRNA代謝の異常を網羅的に明らかにした。U1 snRNA変異型腫瘍では、スプライシング異常に加え、イントロンの5′末端側における異常なポリアデニル化の亢進が認められた。また、RNA修飾解析では、変異型腫瘍においてN6-メチルアデノシン(m6A)の修飾が全体的に増加していることが示された。これらの結果から、U1 snRNA変異はスプライシング異常を引き起こすだけでなく、ポリアデニル化やRNA修飾といった複数のRNA代謝プロセスに広範な異常をもたらし、髄芽腫の発症や維持に関与している新たな分子基盤であることが明らかとなった。
公表論文 Development of a rapid and comprehensive genomic profiling test supporting diagnosis and research for gliomas. Brain Tumor Pathol 41, 50-60 (2024). https://doi.org/10.1007/s10014-023-00476-3
Evolving driver mutations in adult-onset SHH-medulloblastoma originated from radiological cerebellar abnormality. J Neuropathol Exp Neurol 83, 791-794 (2024). https://doi.org/10.1093/jnen/nlae051