研究助成

2022年度 ライフサイエンス研究助成

生きた化石オウムガイのらせん型貝殻の形成メカニズムに関わる初期発生や生体鉱物化関連主要遺伝子の解明

研究題目 生きた化石オウムガイのらせん型貝殻の形成メカニズムに関わる初期発生や生体鉱物化関連主要遺伝子の解明
年度/助成プログラム 2022年度 ライフサイエンス研究助成
所属 和歌山工業高等専門学校 生物応用化学科,地域共同テクノセンター
氏名 Setiamarga Davin
キーワード バイオミネラリゼーション / 頭足類 / 貝殻形成 / 貝殻マトリックスタンパク質 / ボディプラン
研究結果概要 頭足類は貝殻の退化段階が多様であり、貝殻形成メカニズムとその進化は未だ不明である。本研究では、現生頭足類で唯一石灰性外殻を持つ「生きた化石」オウムガイを対象に、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームなどマルチオミクス法による網羅的解析を行い、頭足類にのみ見られる上下巻きらせん型貝殻形成の分子機構およびその進化経緯の解明を目的とした。その結果、貝殻マトリックスタンパク質(SMPs)を85種類全長同定したほか、それらの多くとともに、dpp、eng、nodal、wnt16、hox3、hox4など様々な発生関連遺伝子が外套膜の背側と腹側で明確な発現差を示すことが明らかになった。さらに、胚殻と成体殻の構造的類似性、および間接発生ではなく直接発生する様式を、形態観察と発現解析の両面から確認した。加えて、カイダコ卵鞘形成に関する収斂進化および反復進化の遺伝的基盤、コウモリダコの染色体構造の保存によってタコよりもイカの方が祖先型に近いことの解明、ミトコンドリア系統ゲノム解析による現生頭足類の放散が地球寒冷期に重なったことの解明などの成果も上げている。
公表論文 Hirota K, Tochino N, Seto M, Sasaki T, Yoshida MA*, Setiamarga DHE *. Comparative proteomics of the shell matrix proteins of Nautilus pompilius and the conchiferans provide insights into mollusk shell evolution at the molecular level. Marine Biology 170, 106 (2023)

Yoshida MA*, Hirota K, Imoto J, Okuno M, Tanaka H, Kajitani R, Toyoda A, Itoh T, Ikeo K, Sasaki T, Setiamarga DHE*. Gene recruitments and dismissals in the argonaut genome provide insights into pelagic lifestyle adaptation and shell-like eggcase reacquisition. Genome Biology and Evolution 14 (11), evac140 (2022).