研究助成

2022年度 ライフサイエンス研究助成

脂質代謝異常が神経変性疾患を誘発する機構の解明

研究題目 脂質代謝異常が神経変性疾患を誘発する機構の解明
年度/助成プログラム 2022年度 ライフサイエンス研究助成
所属 お茶の水女子大学 アカデミック・プロダクション
氏名 橋本 恵
キーワード 前頭側頭型認知症 / ミクログリア / 炎症性脂質 / 神経変性 / プログラニュリン
研究結果概要 前頭側頭型認知症モデルGrn-/-マウス脳において、加齢に伴いミクログリアが補体を分泌し神経を攻撃することがわかっている。加えて、ミクログリアが炎症性脂質を過剰分泌して神経変性を誘発する可能性を見出した。しかし、ミクログリアが脂質代謝不良を引き起こし神経細胞死を誘発する機構は分かっていない。本研究の目的は、オルガネラ分画技術とマルチオミクスを融合させ、ミクログリアの脂質代謝異常が神経変性に及ぼす影響を提示することである。Grn-/-マウス脂質代謝異常を示すオルガネラを特定するために、脳オルガネラ分画液を作製し、オルガネラ局在とオミクスデータを融合させると、初期エンドソーム、リソソーム、輸送小胞において脂質蓄積が確認され、脂質蓄積はミクログリアが発端であった。加えて、Grn-/-ミクログリアにおける脂質のエンドソーム-リソソーム輸送システムが崩壊していた。Grn-/-ミクログリア由来過剰脂質の放出がニューロンに与える影響をミクログリア-ニューロン共培養を用いて解析すると、Grn-/-ミクログリアは炎症性酸化リン脂質を介してニューロン細胞死や神経突起分岐減少を引き起こすことが示された。
公表論文 2-Carba cyclic phosphatidic acid regulates blood coagulation and fibrinolysis system for repair after brain injury. Brain research 148511, 2023
Stab-Wound Mouse Model for Studying Hemorrhage and Inflammation in Traumatic Brain Injury. Journal of Visualized Experiments (216), 2025