研究助成

2022年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))

乳癌患者の免疫機構に化学療法剤が及ぼす効果の解析―最適な免疫チェックポイント阻害剤と化学療法の併用療法の構築を目指して―

研究題目 乳癌患者の免疫機構に化学療法剤が及ぼす効果の解析―最適な免疫チェックポイント阻害剤と化学療法の併用療法の構築を目指して―
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))
所属 信州大学 医学部外科学教室乳腺内分泌外科学分野
氏名 大場 崇旦
キーワード エリブリン / トリプルネガティブ乳癌 / 免疫チェックポイント阻害剤 / CD8T+細胞 / 微小管阻害剤
研究結果概要 トリプルネガティブ乳癌(TNBC)に対する免疫チェックポイント阻害剤 (ICIs) の効果を増強させる治療戦略の開発が求められている。本研究の目的は化学療法剤の免疫細胞への直接的な作用を解明し、さらに宿主の免疫細胞に最もよい影響を及ぼす化学療法剤を同定し、最適なICIsとの併用療法の構築を目指す。
申請者らは、微小癌阻害剤であるエリブリン治療開始時の乳癌患者の免疫状態が予後と関連していることを報告し、エリブリンが患者の免疫細胞に何らかの影響を与えている可能性を考えた。そこてエリブリンが免疫細胞に与える影響の解析を行い、以下3点の研究成果を得た。
(1)エリブリンはTNBC患者のCD8T+細胞の増殖を促進する。
(2)エリブリンはTNBC細胞に対するCD8T+細胞を介する抗腫瘍効果を増強する。
(3)エリブリンはCD8T+細胞の免疫反応や細胞増殖に関する遺伝子発現を上昇させる。これらの結果から、エリブリンはCD8T+細胞の増殖促進効果を有し、宿主腫瘍免疫によい影響を及ぼす化学療法剤であると考えた。今後はエリブリンに焦点を絞り、最適なICIsとの併用療法の構築を目指したい。
公表論文 Eribulin promotes proliferation of CD8+ T cells and potentiates T cell-mediated anti-tumor activity against triple-negative breast cancer cells, Breast Cancer Res Treat; 203(1):57-71, 2024