研究助成

2022年度 薬学系研究助成

線維化を誘導する架橋酵素反応の包括的な修飾部位同定法の開発と分子機構解明研究

研究題目 線維化を誘導する架橋酵素反応の包括的な修飾部位同定法の開発と分子機構解明研究
年度/助成プログラム 2022年度 薬学系研究助成
所属 名古屋大学 大学院創薬科学研究科 細胞生化学分野
氏名 辰川 英樹
キーワード 架橋酵素 / 細胞外マトリクス / 線維化 / プロテオミクス / 創薬
研究結果概要  慢性臓器疾患に伴う線維化では、細胞外マトリクス(ECM)の過剰な蓄積と異常な硬化が進行し、臓器の機能不全や不可逆的な障害を引き起こすが、現在のところ有効な治療法は確立されていない。線維化は疾患原因を問わず多くの臓器に共通して発生する治療困難な病態であり、その制御法の開発は医療現場における重要かつ緊急の課題となっている。
 本研究では、線維化に関与する架橋酵素TG2が標的とする基質タンパク質およびその修飾部位を網羅的に同定するため、独自に開発した新たな技術を開発した。肺線維化モデルマウスに独自設計の標識プローブを投与し、生体内で誘導される架橋修飾反応を効率的に可視化・捕捉した後、精密な質量分析によってTG2依存的に形成される多数の架橋修飾残基を同定した。さらに、培養細胞を用いた線維化誘導モデルを構築し、同定した修飾部位周辺配列に基づくデコイペプチドの競合阻害効果を詳細に検証した結果、特定の架橋部位が線維化促進に直接寄与することを示唆する結果を得た。これらの成果は、線維化病態におけるTG2の分子機構の包括的理解に貢献し、今後の新たな線維化治療戦略の開発に大きく資するものと期待される。
公表論文 Tissue transglutaminase exacerbates renal fibrosis via alternative activation of monocyte-derived macrophages.、Cell Death Dis、 2023 Mar 2;14(2):136.

Development of peptide-based biosensors for detecting cross-linking and deamidation activities of transglutaminases.、Amino Acids、2023 Jun;55(6):807-819.