研究助成

2023年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))

エネルギー代謝リプログラミングに着目したRET阻害薬獲得耐性分子メカニズムの解明

研究題目 エネルギー代謝リプログラミングに着目したRET阻害薬獲得耐性分子メカニズムの解明
年度/助成プログラム 2023年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))
所属 筑波大学 医学医療系診断病理学
氏名 柴 綾
キーワード 肺腺癌 / ミトコンドリア / 電子伝達系阻害薬
研究結果概要 RET融合は非小細胞肺癌(NSCLC)患者の1〜2%に検出されるドライバー遺伝子である。RET陽性腫瘍は、バンデタニブのようなマルチキナーゼ阻害剤またはRET選択的阻害剤で治療されるが、早晩耐性化し再発するという課題がある。本研究では、CCDC6-RET融合を有するLC-2/ad細胞からバンデタニブ耐性(VR)株を樹立し、その耐性化メカニズムを探索した。
各VR株は独特の変異シグネチャおよび発現プロファイルを有し、それぞれ独自のメカニズムを介して耐性を獲得したことが示唆された。そのうち1つのVR株においては損傷したミトコンドリアの増加が見られ、ミトコンドリア電子伝達鎖阻害薬に高い感受性を示した。ミトコンドリアの増加は、NSCLCのTKI治療後の生検検体の13/20例でも観察され、耐性腫瘍を治療するためのミトコンドリアを標的とする潜在的な戦略を示唆している。我々のデータは、NSCLCにおけるRET阻害剤耐性に対抗するための有望な新規治療選択肢を提案する。
公表論文 Shiba-Ishii A, Isagawa T, Shiozawa T, Mato N, Nakagawa T, Takada Y, Hirai K, Hong J, Saitoh A, Takeda N, Niki T, Murakami Y, Matsubara D. Novel therapeutic strategies targeting bypass pathways and mitochondrial dysfunction to combat resistance to RET inhibitors in NSCLC. Biochim Biophys Acta Mol Basis Dis, 1870(6):167249. 2024