研究助成

2023年度 薬学系研究助成

2型糖尿病および慢性心不全に共通する病態解明と治療応用の可能性

研究題目 2型糖尿病および慢性心不全に共通する病態解明と治療応用の可能性
年度/助成プログラム 2023年度 薬学系研究助成
所属 千葉大学 大学院薬学研究院 臨床薬理学研究室
氏名 佐藤 洋美
キーワード 2型糖尿病 / 心不全 / 脂肪組織 / 心筋 / SGLT2阻害薬
研究結果概要 本研究では2型糖尿病患者と慢性心不全に共通するインスリン抵抗性を伴う組織炎症が疾患初期からの病態形成を反映する可能性を考え、その表現型を代謝変動で評価することを目的とした。まず糖尿病や心不全患者の臨床試験被験者個別情報から疾患進行を数理モデルで予測し、推定されたバイオマーカーの変動から病態形成機構の仮説を立てた。続いて関与が示唆される細胞系にて細胞外グルコース濃度変動や炎症誘導などインスリン抵抗生を惹起する条件においてメタボローム解析を実施した。臨床情報の調査より、二つの病態で共に心拍数や血圧などのバイタルの低下および腎機能低下は疾患進行を説明する主要な因子であった。生命予後への影響を鑑みて、本研究では病態形成の責任細胞として心筋自体の変化と、心臓や腎臓の組織炎症へ関与する細胞種として脂肪細胞およびマクロファージに注目した。細胞内と上清中に分泌される代謝物の変動は整合しており、細胞種を超えて共通する変化も観測された。また、双方の疾患で心保護作用が期待されているSGLT2阻害薬は低濃度から炎症細胞のメタボロームシフトを起こし、代謝調節は新たな創薬標的に繋がることが示唆された。
公表論文